2011年06月05日

『星を追う子ども』から「演出」を知る

背景の演出が凄いというよりも、背景と動画の一体感が素晴らしいとでも言いましょうか。

デジタルペイントが普及した今、アニメーション製作への壁は低くなったかもしれません。
何万枚ものセル画を永遠と手作業で塗るよりは楽…ではないんですねこれが。
デジタルだからこそ可能になった技法はグンと増えましたから、それを極限まで生かそうとするとそれこそ気の遠くなる作業が待っているのです。

自分が新海作品に魅かれる要素の大部分はこれですね。
今回の作品は人物の動きが今まで以上に繊細になってますが、背景に動画を貼り付けるだけではあんな映像にはなりません。
いくつものフィルタを重ねて初めて動画が静止画に溶け込む、この工程を省くと人物が妙に明るくなったり、いかにもデジタルペイントのベタ塗り感が目立ってしまう。本当に全体のバランスを考えた作品だと思います。

リピーターキャンペーンの非売品ポスター

デジタルならではの技法として、アスナとミミが見送る電車が挙げられます。
トゥーンシェイダーを用いて3Dモデリングに輪郭線を出し、更にビットレートを落とす事で2Dとの違和感が無くなっています。
冒頭の鉄橋、アパッチ(ヘリコプター)、終盤のシャクナ・ヴィマーナも同じです。
折角の3DCGをコマ落ちさせるなんて!ではなくて、その工程が無いとそれこそCGのヌルヌル感が出てしまうのでワザとカクカク感を出す。
つまり「アニメっぽくさせる」高度な作業と言えるでしょう。

今までの作品でも見られましたが、逆光のカットが多いですね。
逆光になると必然的に人物が薄暗くなりますが、逆光で差しこむ光でキャラクターを際立たせる演出は本当に美しいです。
日常の1コマをアニメにするのは誤魔化しが利きません。それはそれで面白い作業ではありますが、光の表現1つにしても気を遣います。
一方アガルタ世界でも太陽が昇り沈みます。どこか見た事のあるような景色ながらファンタジーの世界。
それでも雲の下に落ちる影、雲自身に掛かる影、雲の隙間から差しこむ光。異世界でも地球のどこかにありそうな景色を描く事で作品にスッと馴染む事ができるんじゃないかと思います。

夷族の巣からの脱出(COMPLETEブックから)

その他、アモロートの兵との戦いのシーン。作品の中でも見せ場の1つだと思いますがアクションが凄いです。
新海監督はこういう演出にも力を入れたのだなぁと感心すると同時に、モリサキの銃を阻止する為にシンが投げた剣が岩に突き刺さるカット。その剣にモリサキの驚いた顔が一瞬写り込んでいたりします。
こういう細かい所までこだわる作品はそう多くありません。

…まだまだ語りたい事は一杯ありますがこれぐらいで(笑)。
何回でも観たい「星を追う子ども」。次は人物像について書いてみたいと思います。


posted by ビター at 23:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 新海誠
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